NGV(Natural Gas Vehicle)ジャパン

海外での天然ガス利用実例

海外の天然ガスの利用実績は国ごとに事情が異なっています。しかし、大型商用車、船舶に関しては天然ガス燃料しかコスト面、CO2削減量で実用的な燃料は無いというのは共通しています。

【ヨーロッパ】

 ヨーロッパでは呼吸器疾患の罹患率・死亡率が上昇し、市民の健康問題の解決が急務でした。そこにフォルクスワーゲン社などのディーゼル排気ガス不正問題もあり、ガソリン・軽油の代替燃料への移行を進めることを決断。2014年10月にEUとして、DAFI (The deployment of alternative fuels infrastructure)と呼ばれる指令(Directive)を発表し、加盟国に代替燃料インフラの整備を義務付けました。公平な競争という観点から「電気」「水素」「天然ガス」などすべての代替燃料に優劣をつけずに、インフラを整備する環境を整え、パリ、マドリードなどの都市が市内へのディーゼル車の流入を禁止する期限を設けたり、新車販売を禁止する措置を施行。このすべての流れはDAFIの流れを受けています。ただし、内燃機関が禁止されているわけではなく、バイオ由来の天然ガスへの移行を条件とはしていますが、天然ガス自動車は市内への流入を禁止されてません。その中で長距離、重量貨物の輸送にはLNGトラックが選ばれています。NGVA Europeの資料によると現在EU28加盟国での充填所数はCNG用3,943箇所、LNG用364箇所に及んでいます。また、東欧を中心としたLNG運送への需要急拡大を受けてLNG充填所数は2,000箇所まで増えていくものと予想しています。
 

【アメリカ合衆国】

 ロサンゼルスのスモッグに代表されるように、排気ガスによる大気汚染に悩まされていた米国は、以前から天然ガスを燃料としたバスの導入に積極的でした。また、バイオ由来の天然ガス開発にも熱心で、バイオ天然ガス用にRNG(Renewable Natural Gas)という造語で普及を図っています。欧州とおなじように各燃料技術に優劣をつけず、公平に競争をさせています。欧州では液化したLNGで長距離、重量輸送をするのが主流でしたが、LNGはボイルオフガスの管理が必要なため、管理が不要なCNGに人気があります。CNG充填所の数は1,730箇所で建設中が50箇所。LNG充填所数は182箇所で建設中が38箇所です。
 

【中華人民共和国】

 北京を始めとする大都市の排気ガスによる大気汚染に悩まされていた中国は、家庭用エネルギーの天然ガス化、乗用車の電気自動車化、大型トラック・バスのLNG燃料化を進めてきました。例えば北京市交通局ではLNG・電気以外の燃料のバスは走行していません。また長江の輸送船についてもLNG燃料化がほぼ完了しています。中国ではLNGトラックを製造しているメーカーはFOTON、DONGFEN、C&Cなど7社あり、天然ガス自動車の普及台数は約500万台、そのうちLNG車両は40万台といわれています。天然ガス充填所はCNG・LNGで合計約8,000箇所と言われています。
 
 その他、天然ガス自動車が普及しているのはイラン、パキスタン、アルゼンチン、インド、ブラジルなど多岐に渡ります。

中国のLNGバス

イタリアのマルチ充填ステーション

スペインのLNGステーション