NGV(Natural Gas Vehicle)ジャパン

LNGトラックのメリット

【NOx・CO2を大きく削減。大企業も導入を始めています。】

 天然ガスを燃料としたエンジンはガソリン用エンジンに似ており、空気と混合して圧縮した燃料をスパークプラグで着火して内燃機関として利用します。ガス状燃料は液体燃料に比較して容積密度が低いため”天然ガス“は圧縮してCNG(Compressed Natural Gas)として車両に搭載するか、液化してLNG(Liquefied Natural Gas)として搭載します。LNGとして液化すると容積密度が上がるため、CNG車両での航続距離が500km前後であるのに対し、LNG車両の航続距離は概して1,000km以上、長いものでは1,600kmにも及びます。そのため、充填所の数がそれほど多くなくても日本国中をカバー可能です。
 現在の天然ガス自動車はイタリアで誕生しました。ガソリンからの代替燃料開発の過程で、ガソリンの代わりにガスを燃料噴射する形で開発。LPガスのように外気温度により燃焼性能が変化する場合、車両メーカーは性能保証が出来ませんが、天然ガスであれば安定しているので、車両メーカーとしては天然ガス専用車両を発売することが可能に。さらに、イタリアFIAT社が天然ガス自動車を新車で発売したことで爆発的な普及の助けになりました。徐々に性能も上がっていき、2016年にイタリアIVECO社が世界初のLNG大型トラックを発売したときには、8.7リットルエンジンで400馬力、航続距離は1,500km(カタログスペック)と従来の大型車両と遜色のない性能まで向上しています。
 天然ガスエンジンは欧州でディーゼル車を禁止する元となった「PM」がほぼゼロ、NOxも触媒により大きく削減できるという大気汚染の観点からのメリットがあります。そのうえ、現在の技術でディーゼル車と比較してCO 2が約20%削減できるメリットがあり、さらに化石燃料由来の天然ガスにバイオ由来の天然ガスを17%混合させると対ディーゼルで約34%CO 2を削減可能です。
 カルフール、AMAZONなど将来の温暖化ガス排出をゼロを目標にしている企業では、天然ガス、特にLNG車両を導入することで、顧客に対して運送品質・温暖化ガス削減率をアピールしています。これからの時代は社会貢献が出来る企業に投資が集まる「ESG投資」が主流になる傾向も指摘されているので、企業の社会貢献は非常に重要なファクターとなり得ます。

【LNG充填ステーション】

LNG(液化天然ガス)ステーション

ー162℃で冷却し体積が約1/600になった天然ガスがLNG(液化天然ガス)です。世界では大型トラックやトレーラーなどの天然ガス自動車がLNGを燃料に数多く稼働しています。日本ではまだ2箇所しかないステーションですが、これから増えていく予定です。

LNGモバイル(移動型)ステーション

運送会社の営業所などに簡易的に設置する移動型のLNGステーションです。メーターやディスペンサー等充填に必要な設備を備えたLNGタンクをトレーラーで運びます。タンクが空になったら、新しいタンクを持ってきて空のタンクを回収する、LPガスのような方式を採用しています。

【大型トラック用燃料の変遷と未来】

 大型トラックの歴史は1700年代から始まります。木炭・石炭・ガソリン・ディーゼルとその時代の最先端エンジンを動かす動力源として様々な変遷を重ねてきました。2000年代に入り環境問題が大きく取り沙汰されると、化石燃料の中では最もクリーンな天然ガスを燃料としたトラックが登場します。さらに、天然ガスの主成分「メタン」は、有機物が分解される過程でも発生するので、枯渇しない資源として嘱望されています。 いずれスタンダードになるであろう水素エネルギーも、現状は生産コストが高く、実用化まではまだ暫く掛かると思われる今、それまでの「中継ぎ」として、現状では天然ガスが最もクリーンで低コストなエネルギーと考えられます。